挨拶
意味が抜けたおかげで、毎日使える言葉。
「おはよう」に、早いという意味はもう残っていない。
意味が抜けたおかげで、毎日使える言葉。
「おはよう」に、早いという意味はもう残っていない。
四十七文字を一度ずつ使って、人生は無常だと言い切った歌。辞書の並び順に使われている。
日本語で最短の肯定。否定の「ううん」とは、長さでしか区別できない。
六年かけて、読めることと話せることは別だと学ぶ科目。
漢字が言い残した部分。
「行く」の「く」。漢字は「行」まで言って黙る。
読めるのに書けない、を一文字で体験できる発明。
親の語彙が、子どもの一生に残した署名。
息継ぎの場所を紙に書いたもの。多いと息が荒く、無いと溺れる。
相手との距離を、言葉の長さで測る装置。
「来て」が「お越しいただけますでしょうか」になるまでに、三メートル離れている。
送信した直後にだけ見える文字。
思ったことを書けと言われて、思っていないことを書く練習。
まだ通じるのに、使うと年齢が通じてしまう言葉。
辞書が追いつく前の言葉。追いついた頃には、もう古い。
前の文に責任を取らせる言葉。「しかし」の一言で、前の文は裏切られる。
既にある言葉で言えることを、言えないふりをして作る言葉。
文から切り離すと、意味が半分になるもの。覚えるのは、その半分。
辞書どおりに訳して、辞書どおりに通じない文。
I have a pen. 私はペンを持っています。誰も、そうは言わない。
正しく言えたことではなく、相手が勝手に分かったこと。
外国人には難しく、日本人は間違えても気づかない部分。
決めないことを決めた、と言うための副詞。
「とりあえずビール」。決断は、ビールが来るまで延びる。